うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

題詠みたんか7(~'21.5.31)

お題サイト様で詠んだ短歌たち。
切りよく5月末まで入れたいですね

満開で首から落ちた芍薬の残り香ばかり抱きしめている
2021年05月31日『芍薬

額縁の向こうで鳥が線を引く四角く切り取られた青い空
2021年05月28日『空』

呼ぶ声は記憶の奥に撫でる手の感触がもう遠くなっても
2021年05月27日『呼』

あの頃に撮った写真だ僕たちが未来を疑わないでいた頃
2021年05月26日『撮』

海をゆく蝶の群れたち羽ばたきは地球の裏で嵐となるか
2021年05月24日『バタフライ』

制服のポッケで寝てるナイフだけ味方だ今日も世界は敵で
2021年05月22日『敵』

指先がふれた箇所から熱を持つ首筋、頬、顎、唇、もっと
2021年05月21日『肌』

一本のマッチと紫煙また少しごまかしている夢のない日々
2021年05月20日『夢』

ゴミのように過去を放ったあとで君がそっと拾ってくれていたから
2021年05月19日『ゴミ』

木漏れ日を見たことはないけどきっと君の声みたいな色だろう
2021年05月18日『木漏れ日』

部活後のミックスサンド9月からツナを分けっこすることでしょう
2021年05月17日『サンドウィッチ』

煤煙を遠くに見やるぱちぱちと広がっていく隣のほのお
2021年05月14日『煤』

毎日を人と過ごして僕達は『今ヒマ?』『お風呂』繋がっている
2021年05月13日『お風呂で ◯◯ した話』

ブレーキはないと知っててアクセルをめいっぱい踏む 負ければ地獄
2021年05月12日『地獄』

散る花が人から守る見上げない枝でのびのびひかるみどり葉
2021年05月11日『初夏』

海を見に羽ばたく蝶を見送ったかつて満開だった木の枝
2021年05月10日『自由詠』

君だけが呼ぶための名だ今はもう誰も知らない死んだ音たち
2021年05月09日『名』

コーヒーに誘われたふりサイフォンに優しくふれる指が見たくて
2021年05月08日『カフェ』

はじまりの約束ぼくらお互いの弔辞を書こう 動かないペン
2021年05月07日『葬』

思い出はタバコの香り生ぬるい唇越しにノックする舌
2021年05月06日『思』

うつくしい悪魔のような人でした内にこわがる少年を飼う
2021年05月05日『男』

有能な《この言葉は検閲されました》(くそやろう)より人想う凡庸が取る舵がいいなあ
2021年05月03日『国』

はたらけどはたらけどなお道はなし回し車をカラカラ走る
2021年04月28日『働』

一本のマッチのようなひとだった付けられた火は今も消えずに
2021年04月27日『火』

正しいと言って言われて僕たちは鼓動の弱る音を聞いてる
2021年04月26日『正』

愛してるともきけなくて印鑑を転がしている昔の姓の
2021年04月12日『印』

一本を足せや引けやと言われてもこのご時世だ繋ぐ手もなし
2021年04月05日『辛』

陽光でちらちら光るちりたちで花見を済ます白い個室で
2021年04月02日『光』

日記にはできたことだけ書かれてて隅でしょんぼりする紙おむつ
2021年04月01日『記』

七羽目のカラスを縊る朝刊を運ぶバイクに手は出せないし
2021年03月31日『七』

つま先に残るペディキュア最後まで誰も知らない秘密のままで
2021年02月16日『爪』

練乳をたらたら掛ける素のままで好きと言われたことはないもの
2021年02月15日『苺』

キティちゃんは真衣のよママが言ったのに「おねえちゃんでしょ」信じてたのに
2021年02月10日『好きな食器』

空をとぶために融けたの雪のした枯れ色のまま蛹はひとり
2021年02月09日『蛹』

姿見の前でひと塗りして笑顔きょうもよるまでもちますように
2021年02月07日『塗』

モンゴルの残り香を吸う黒い目に砂漠を映すプレリードッグ
2021年02月05日『モンゴル』

幸せにいきているかい雪だるまマフラー 帽子を分けてもらって
2021年02月04日『雪だるま』

仕事だからずっと笑っていましたねあのとき怒ってよかったんだよ
2021年02月02日『〜拝啓 二十五の君へ〜』

踏まれても踏まれてもなお天を見るもちろん枯れるタンポポもいる
2021年02月01日『踏』

もう二度と撮れない写真を胸に抱き空まで飛んで行けタケコプター
2021年01月31日『竹』

コロッケは買うほうが楽じぶじぶと鍋から囁いてくる悪魔
2021年01月29日『コロッケ』

咲く前に身を引くことを決めたのにブロッコリーを茹でられずいる
2021年01月28日『ブロッコリー

来し方を振り返りまた石を積むまた崩されるまた諦める
2021年01月27日『来』

ストローはため息をつく細長い音に合わせてあぶくが踊る
2021年01月26日『ストロー』

理系でも現文は良い片恋を気の迷いだと言わせないため
2021年01月25日『現』

鈴の音で鳴いた仔猫が大寺の鐘に劣らぬまで育ちきり
2021年01月24日『鈴』

エビチリの代わりになれるモモ肉を食べてるみたいわたしはわたし
2021年01月22日『鶏肉』

整った身ではないから百年をかけて自分に調えてゆく
2021年01月21日『整』

生けられた白百合の葯はずしつつしまいそびれた振袖を干す
2021年01月20日『百合』

あれもそれもダメな世の中桃尻の幼児を胸に住まわせマスク
2021年01月19日『駄目』

妹と呼んだ仔猫は早々とおとなに母に骨になりゆく
2021年01月18日『先輩』

づけ汁を刺身がおよぐ日々濁る本音を情でごまかしながら
2021年01月16日『刺身』

かつかつと毛を吐く猫の背をなでる好きも言えない恋をしている
2021年01月15日『吐』

行き先も知らないでいた振り返り振り返りする背中だけ見て
2021年01月14日『背』

ラーメンにコーンとライス部活後の記憶の味が腹に重たく
2021年01月13日『麺』

異文化は尊重したい挨拶を待ってる犬の尻をただ見る
2021年01月12日『尻』

おかあさん凧じょうずだね 手をつなぐコツと似てるんですよ君との
2021年01月11日『凧』

海よりも空よりも青きゅうくつに車窓に並ぶ無人ビル街
2021年01月10日『自由詠』

誰何する音も懐かしく初恋をゆり起こされる同窓会だ
2021年01月08日『誰』

首の根を晒して落ちる紅椿おまえも夢を抱いていたのか
2021年01月07日『椿』

三年もひとりとひとり夕飯にドレッシングをどぼどぼかける
2021年01月06日『ドレッシング』

春夏に買った便箋宛先を思い浮かべてほこりが積もる
2021年01月05日『便』

羊にも山羊にもなれず白鳥は今日もひづめに憧れている
2021年01月03日『山羊』

まだ若いまだ若いからと言い聞かせ見通し立たぬ三十の夜
2021年01月02日『三』

かすがいに依存している両親に腕を引かれる子のおどけ顔
2020年10月14日『依存』

童謡を歌う子どもに「さざんかって知ってる?」「知らない。ママは?」「ママもよ」
2020年10月09日『山茶花

蝶番(ちょうばん)になりたい夜だ軋む身で文句くらいは言わせてほしい
2020年10月07日『番』

金曜はレトルトだって土曜日は外食だって誰も死なない
2020年10月06日『って』

厚焼きの玉子のしっぽ遠足の朝に必ず食べてた父は
2020年10月03日『厚』

トライアンドエラーの日々だ今夜こそ攻略したい背中スイッチ
2020年10月02日『エラー』

なるようになるの祈りを抱えつつじわじわ下る道をゆく年
2020年10月01日『なるようになる』

僕たちはしょせん動物でしかなくだからいじめも恋も止まない
2020年09月30日『哺乳類』

白黒の画面で踊るマドンナの名前は今も色鮮やかに
2020年09月29日『古い映画』

大空を見つめさえずる文鳥が焦がれる外は部屋と手の中
2020年09月28日『鳥』

たっぷりの砂糖シナモンレモン汁マザーグースを歌いつつ煮る
2020年09月24日『ジャム』

ゼロイチを螺鈿で刻むいつか僕の骨を燃やしてダイヤにしたい
2020年09月23日『螺』

変人として距離を置く本当の自分を見せる気がないもので
2020年09月19日『変』

ややこしや、口ずさみつつ3時間揺らしてやっとやや子は眠る
2020年09月18日『ややこし』

白米と玉子しょう油黄金比教えてくれた人はもうなく
2020年09月17日『黄金』

寄る辺なくただよっているメンマにも海苔にも箸で遠ざけられて
2020年09月16日『辺』

残り香はまろいばかりでバージンの肺が欲しがっているキスの味
2020年09月15日『煙草』

水滴を溜めたグレーの決壊はもうすぐだから泣くなそれまで
2020年09月14日『決』

怒ってる人の顔だと思ってた記号に熱と音がついた日
2020年09月11日『火』

縛られず自由であれの命を受けごぉしちごぉと数える僕ら
2020年09月10日『自由詠』

からからを欲しいと泣く子ばあちゃんがお口にしまう白いからから
2020年09月09日『から』

もう寝てる腕に頭を押し付ける心臓の音 猫になりたい
2020年09月08日『頭突き』

「朝ごはん「いらない!」冷蔵庫にしまう「あとでたべたかったのに!!!!」の乱
2020年09月07日『乱』

早起きに早飯早風呂早化粧せめて早寝をしたいよ母は
2020年09月06日『「早」で始まる造語』

棚の下傘立ての奥節分のへそくりたちがまだ守ってる
2020年09月04日『豆』

シオカラをオニヤンマだとはしゃぐ子に優しい嘘をつく虫ハカセ
2020年09月03日『トンボ』

しゃりしゃりと剥かれた皮はうさぎにもバラにもなれず捨てられていく
2020年09月02日『梨』

青空が真っ逆さまに落ちてくる 鉄のベッドと窓のない部屋
2020年09月01日『落』

流星に振る細い手がしわくちゃになるまで道を照らしてあげて
2020年08月31日『流星』

フロートの頭を飾るどうせまた脇に置かれる諦め顔で
2020年08月28日『ミント』

残ってた回数券で実家から祖父の家まで運ばれてゆく
朝月 心 0 音 3
2020年08月27日『回』

ママみててビームが出るよ縁側に点々と散るスイカの種は
2020年08月26日『種』

沖縄の菓子を喜び買う子らを眺める丸いドーナツふたつ
2020年08月25日『ちんこ』

焼畑を繰り返してる恋でした速く育てど実にはなれない
2020年08月24日『畑』

ひとつずつ積み上げていく鬼が来てまた壊されるだけの仕事を
2020年08月21日『コツコツ』

側溝にポイ捨てされる運命と知ってて今日もおはようの声
2020年08月19日『溝』

白檀の香りがみちる新盆に孫が持ち込むミルキーの味
2020年08月18日『線香』

幸運のシロツメクサは踏みつけにされた茎から芽を出し開く
2020年08月17日『根性』

平和とは見えぬ敗者を産むことだサブレの鳩の頭をかじる
2020年08月15日『平和』