うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

題詠みたんか4(~'18.9.7)

お題サイト様で詠んだ短歌たち。

 

選ばれた文字が切り出す色彩に選ばれなかった音は消えゆく
2018年09月07日『擬音』

ガラス戸を開けて知らない空に会うひえびえとした夜のため息
2018年09月06日『肺』

じゅぶじゅぶと焼けた秋刀魚を横に切るとおになったら全部あげるね
2018年09月05日『秋刀魚』

蒼玉と呼ばないでくれ結局は赤になれないものの集まり
2018年09月03日『サファイア

おざなりな手製のくじは天国か地獄かあの子の後ろになあれ
2018年09月02日『籤』

原色を眩しがらない少女らは赤い唇ばかりが目立つ
2018年09月01日『口紅』

滑らかな敬語で話し笑む人の囁く声にのぞく郷愁
2018年08月30日『関西弁』

立秋も終わった頃に顔出したいつもの夏にあいさつをする
2018年08月26日『残暑』

苔玉に霧吹きをするこの子らもガラスの外じゃ生きていけない
2018年08月25日『苔』

何回もイメトレをした告白も台詞が飛んでアドリブになる
2018年08月24日『回』

とうさんはおなすがきらいだったから キュウリの馬が二頭寄り添う
2018年08月23日『馬』

なくなった尻尾に代わりぷりぷりと喜んでいるコーギーの尻
2018年08月22日『尻』

ベランダではためいている黄金の地図が描かれた一反木綿
2018年08月21日『反』

しゃりしゃりと林檎を回す願掛けにしたから赤い皮は切らない
2018年08月20日『包丁』

お飾りのはずの水着の腰布の短さばかり気になっている
2018年08月19日『ミニスカート』

明るければ寝坊をすると聞いた子に抱かれテレビを見てるアサガオ
2018年08月18日『アサガオ

水分をとればタイムが落ちるからなみなみ注ぐ神棚の水
2018年08月16日『紫』

終電もなくて呟くソファの上きょうもたいへんがんばりました
2018年08月15日『優』

話し込む息子の声に多分まだ気づいていない春を嗅ぎ取る
2018年08月12日『多分』

泣いた子の背に浮き上がる骨2枚お前も羽を捨ててきたのか
2018年08月11日『背』

世の中は広く世間は狭いから水槽くらいの自由がほしい
2018年08月10日『自由詠』

カブトがいいカブトがいいと言われつつ今日はスイカをもらっています
2018年08月08日『クワガタ』

火が点いた勢いで泣く二歳児のサンダルにいる一匹のアリ
2018年08月04日『大事』

断捨離をしてなお残るもう着ない初めて買ってもらったスーツ
2018年08月03日『思い出』

今はぼく「子ども」じゃなくて「小人」ね じゃあ弟はどんな人だろ
2018年08月01日『小』

冷房の効いたリビング汗をかくコップと氷の解けた麦茶と
2018年07月30日『濡』

鉄棒を掴んで回る地面から空まで落ちていく夢を見る
2018年07月26日『棒』

譲られた優先席に腰掛けるまさか脂肪ですとは言えずに
2018年07月25日『腹』

放浪と旅行は違う誰よりも自由を知らず飛ぶ渡り鳥
2018年07月23日『渡』

集会に参加するためじいちゃんの池まで泳ぐ都会のカエル
2018年07月22日『田舎』

1日が50時間になったって自由も貯金もきっと増えない
2018年07月21日『24時間』

文字にさえ育たなかった歌たちと真夏の夜を並んで過ごす
2018年07月19日『没』

納豆も味噌もキムチもわたくしも愛してくれる方がおります
2018年07月18日『腐』

クーラーの効いた車で絡み合うふたり温泉玉子になるまで
2018年07月17日『熱』

青らしく見せているだけ本当は空の青さを借りているだけ
2018年07月16日『水色』

ゼロよりは近づいてると言い聞かせかたい言葉で続けるメール
2018年07月13日『メール』

毎日を生きる希望はかたちなく白馬の王子様と似ている
2018年07月12日『何か』

夕焼けをカメラで狙う色彩を殺して空の標本にする
2018年07月10日『自由詠』

正社員こどもは2人一戸建てテレビはいつも僕に厳しい
2018年07月09日『普通』

舌先で転がす言葉苦味だけ真っ直ぐ喉を滑り落ちてく
2018年07月08日『黙』

まだ行くなまだ消え行くなほうき星ゆっくり冷える手をかき抱く
2018年07月07日『星』

今週は晴れのちくもり涙雨チーズケーキをふたつ買おうか
2018年07月06日『天気予報』

キッチンを懐柔してるシンクだけ冷たくひかり私を拒む
2018年07月05日『キッチン』

テニスならもう終わってるいつだって三往復で途切れるLINE
2018年07月04日『ラリー』

前進も右向け右もしないまま息を合わせて波から逃げる
2018年07月03日『蟹』

水というものも知らずにそよ風と戯れているガラスの魚
2018年07月02日『風鈴』

夕暮れに曇る笑顔を思い出す鎖は弱い場所から切れた
2018年06月30日『鎖』

青々と茂る隣の芝を見る ちがいは種か土か心か
2018年06月29日『隣』

鉛筆は尖れば折れる少しだけ丸みを残し息子に渡す
2018年06月27日『尖』

4本の脚で立ってるアメンボもちゃんと虫だし翅だってある
2018年06月26日『アメンボ』

週末はアパートで見る10秒のCMですら僕向けじゃない
2018年06月25日『CM』

ぴかぴかのままにしたくて窮屈になるまで履けなかった長靴
2018年06月20日『長靴』

人参が嫌いで何がいけないの鼻を鳴らして嘯くうさぎ
2018年06月19日『人参』

明日から双子の僕が出社する設定で息する月曜日
2018年06月18日『双子』

掴んでもいずれは消えるだいだいを瞼の裏に焼き付けている
2018年06月16日『線香花火色』

制服を着崩すことが個性だと謳う空気を眺める美人
2018年06月15日『制服』

ことわりはいらない 躊躇も理性まで吹き飛ばすほど想いぶつけて
2018年06月14日『理』

10℃より寒いと息が白いって言われたままに信じてた頃
2018年06月13日『℃』

ぱちゃぱちゃと揺れる水面に映る陽とよく似た黄色い長靴の先
2018年06月12日『水たまり』

真っ白なキャンバスの上立ちすくむ無邪気はとうに枯れてしまった
2018年06月11日『自由詠』

泣くたびに時間薬をくれた祖母いく歳経てど褪せない痛み
2018年06月10日『時』

弁えることを知らずに三千里高嶺の花が絆されるまで
2018年06月08日『分』

雨が降るマイナス5点その代わりあなたに逢えるプラス100点
2018年06月07日『雨』

履く人はもういないのに洗われてタンスの奥で眠るソックス
2018年06月06日『ソックス』

思い出を質に入れれば告白に使う勇気を買えるでしょうか
2018年06月04日『質』

1人でも生きていけますアパートで笑いもせずに流す素麺
2018年06月03日『流』

見納めになるかもねえという祖母が白くなるまで生けた紫陽花
2018年06月02日『紫陽花』

愛情と恨みつらみと味噌を入れじっくりコトコト煮込んだスープ
2018年05月31日『スープ』

しわくちゃのシーツが好きだため息を吐いても怒らないでくれてる
2018年05月30日『シーツ』

ニコニコと手紙を食べる楽しみをお腹に溜めて赤くなる頬
2018年05月29日『ポスト』

葉脈も二股ずつに分かれると桜を見上げ語る口元
2018年05月28日『枝』

バリカタでいたけりゃいなよそのかわり出される客をよく選びなよ
2018年05月27日『ラーメン』

ツチノコとどちらが珍しいでしょう花金という都市伝説は
2018年05月25日『金曜日』

先輩の一皮剥けたを今日も聞くきっと前世はタマネギだろう
2018年05月23日『剥』

寂しさと人恋しさを愛情の重石で圧してたくわんにする
2018年05月22日『漬』

五月雨を集めて鳴らす最上川テンポを上げてロックを叫ぶ
2018年05月21日『曲』

木簡に歌を詠むのと文通とメールの何が違うのだろう
2018年05月20日『パソコン』

どこまでも飛べる翼があったって空は居場所になってくれない
2018年05月19日『空』

女にはなりたくないと言う子らのうつくしく引く眉を眺める
2018年05月18日『女』

すれ違う見知らぬ人の香水が泣きたいほどに懐かしい朝
2018年05月17日『記憶』

霧雨に青を一滴混ぜ込んでかなしみとして小瓶に詰める
2018年05月16日『新しい色名を考えてください』

ぐしゃぐしゃと絡まりきった赤い糸もう解けない切るには惜しい
2018年05月15日『糸』

夕焼けに染まった君の笑顔だけ今もまぶたに焼き付いている
2018年05月14日『J-POPの歌詞みたいな短歌』

紅白を争うことに疲れたと言い訳をして選ぶオレンジ
2018年05月13日『カーネーション

欄干にもたれて眠る真っ白な翼で飛んでいく夢を見て
2018年05月12日『羽』

貧しくて楽しかったと言う人の足元にただ花を供える
2018年05月09日『戦後』

へその緒を切らないでいてひとりでも平気だなんて強がれないし
2018年05月08日『緒』

さみしさと嫉妬をこねて卵液とパン粉をまぶしカラッと揚げる
2018年05月07日『粉』

一日に4時間らしい残業はしてないことになってるらしい
2018年05月06日『一週間に十日来い』

なぜなにを知りたがる子が理不尽を諦める日が来ぬよう祈る
2018年05月05日『故』

蝶は落ち花は散るもの 宝石と呼んでくれない男の背中
2018年05月03日『宝』

公園のベンチに忘れられている炭酸飲料みたいな君だ
2018年05月02日『圧』

勇ましき殿のため鳴くホトトギス青い空だけ夢見て歌う
2018年05月01日『鳴』

仕事なら話すだけなら一度なら帰ってくるなら許してあげる
2018年04月30日『セーフ』

時代だの何だの囃す先輩にもう三十路だと言えずに笑う
2018年04月29日『平成』

ぐるぐると流れる水にぽつねんと弛んだ肌の浮き輪が揺れる
2018年04月28日『浮』

だいじょうぶ、だいじょうぶって言う人に心配すらもさせてもらえず
2018年04月24日『丈』

忙しく流れる文字を漫然と眺めて終わるたまの休日
2018年04月20日『暇』

淡色と言ったのは誰 新緑はこんなに強く輝いている
2018年04月17日『春の色』

真っさらな左手を見て息を吐くキツネも番う春だというのに
2018年04月16日『天気雨』