うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

題詠み短歌 2022年

サークルでみそじのあだ名を持つ友が今年四十になると笑う日
2022年12月30日『みそ』

好きだとは言えなかったの願掛けの結果も知らずさよなら椿
2022年12月28日『お疲れ様』

だるく履く靴下文化は死にましたソックタッチを道連れにして
2022年12月25日『ルーズソックス』

明日にまだ捕まらぬよう祈ってるロフトベッドの机の下で
2022年12月23日『ロフト』

契約を交わしたように一日も途切れなく置かれる猫の土産
2022年12月14日『契約』

串カツのタレを二度付けする人だそれでも別れようと言えない
2022年12月13日『串カツ』

イチゴなら栃木ハクサイなら群馬 恋人ならどっちとは聞けずに
2022年12月09日『群馬/栃木』

金ピカの星をもらったツリーだけ変わらないのは サンタはいない
2022年12月01日『冬』

しんどいと言い合うことでしんどさを捨てる努力をしているんです
2022年10月07日『しんど』

泣けぬ子の代わりに泣くというのなら台風くらい荒れろ 失恋
2022年10月06日『秋雨』

ちゃんと起きちゃんと学んで来た道を一夜で恋に踏み外してる
2022年10月01日『ちゃん』

月のある時間は春と変わらねど空見上ぐ日が増えて長月
2022年09月30日『長月』

醒めるほど酔ってないから寂しくもない言い聞かせ捨てる歯ブラシ
2022年09月22日『醒』

初恋にさえ正しさがあるらしいハツコイ味といばるレモンティー
2022年09月20日『恋』

絵日記に書かれもしない夏空を向日葵だけが見送っている
2022年08月25日『夏』

夕暮れの気配どんぶりいっぱいの氷はひとすくいの水になり
2022年08月19日『かき氷』

黒蜜と黒酢が置かれ食卓は統一しないことも文化だ
2022年08月17日『心太』

紅玉に砂糖をまぶすそのままを愛してあげられなくてごめんね
2022年08月16日『林檎』

三年を無駄と吐き捨て消えた人雨に打たれるベランダの鉢
2022年08月04日『スコール』

リズムよくパイナップルと跳んでいくチョキを出さない兄を後ろに
2022年07月25日『パー』

カラオケの履歴に湘南の風並ぶおまえも町を出て行きたいか
2022年07月20日『湘南』

東京も奈良も京都も神様は等しくいない十月になる
2022年07月11日『なら』

ワレワレハエイリアンダを知らぬ子の知る扇風機には羽根がない
2022年07月05日『扇風機』

FMが聞けるラジオが100均で売ってたスマホがなかった時代
2022年07月04日『FM』

好きだよと言うだけ返事はなくていい私を意識するだけでいい
2022年06月22日『呪術』

夏至の日の太陽のよう見るときが長くなるほど僕から遠い
2022年06月21日『夏至

艶やかを芍薬に見る人の手で蜜を拭うて咲かせる花だ
2022年06月20日『やか』

先陣を切って踏み込む銭湯のいつもの席を占拠する祖父
2022年06月17日『「せん」を三回詠み込んで』

バス停ですれ違うだけ初恋と呼ぶことはない呼ぶことはない
2022年06月14日『バス』

飛ぶ鳥の自由気ままに憧れた休む巣のない意味を知らずに
2022年06月10日『自由詠』

8mmのディスクを捨てられずにいるウォークマンはもう持ってない
2022年06月09日『CD』

地獄とはひどいものかね痛いことを痛いと言っても叩かれない場所なのに
2022年06月08日『獄』

コンビニのお握りを呑むお向かいでだし巻き卵が輝いている
2022年05月26日『弁当』

ばあちゃんの味と呼んでたヤクルトを自販機で買う深夜三時だ
2022年05月25日『ヤクルト』

子どもらは巣立ちましたね空になった巣で羽繕いする夫婦がふたつ
2022年05月23日『巣』

薬液がぽたぽた落ちる慰めの嘘を聞くより気は楽になる
2022年05月19日『点滴』

藁しべに時代は戻り木を切って作った紙のストローを噛む
2022年05月18日『ストロー』

堂々と頭を上げる麦の穂を折れろ折れろと刈り取っていく
2022年05月17日『麦』

みどりごの玩具のようなもみじ手に小さく爪の生え揃ひたり
2022年05月16日『緑』

教室に並ぶ手書きの幸いに混ざる辛いは声も上げずに
2022年05月12日『足りない』

真っ白な花咲くというサボテンの横で日に日に丸くなる猫
2022年05月11日『サボテン』

行き先も決めない自由クラゲには舵を取る手も足もないので
2022年05月10日『自由詠』

黄金に神は宿るか人の血を浴びて曇らぬ鉱物たちは
2022年05月09日『黄』

「このやろう」まで打ち込んで変換を押せば大人の「承知しました」
2022年05月08日『承』

西へ行く理由も忘れあやかしは少年たちと戯れている
2022年05月06日『西』

出迎えは春風ひとつ人に溢れ人の目のない東京のまち
2022年04月28日『春風』

飲むように活字をなめる子は今夜ナルニア国で遊ぶのだろう
2022年04月27日『飲』

祖母と繰るアルバムしわしわの指が撫でる私と似た目の少女
2022年04月25日『婆』

溝の口駅からひとつ君と行くコーヒーだけが絶品の店
2022年04月22日『溝』

上野から常磐線で実家まで取手は下ですかそうですか
2022年04月21日『下』

何歳と聞かれるたびにさんさいと笑いカメラにピースをする子
2022年04月20日『さん』

淡々と和音を鳴らす相槌はメトロノームのテンポを保ち
2022年04月19日『和音』

「母さんも留守です」電話取りながら仮面ライダー見てる日曜
2022年04月18日『留守』

15時のヤクルト1000と青色を今日のログインボーナスとする
2022年04月17日『ヤクルト』

新しいカフェを見つけた公園の桜が咲いただから会おうよ
2022年04月16日『だから』

浴槽のあひると二人シャンプーに挑戦してる息子を見守る
2022年04月15日『浴』

十年後懐かしめればそれでいい制服たちもひどい喧嘩も
2022年04月14日『制服』

保育料ほしいぐらいに雷の子が腹を蹴る夏の夕暮れ
2022年04月13日『腹痛』

底なしに食べ続けてる鯉のよう会うたび好きをねだる私は
2022年04月12日『鯉』

10kg(キロ)と公園へゆく晴れの日は行きはよいよい帰りは重い
2022年04月11日『腰痛』

南国へ飛べば燕も凍えまい鉛の心臓ひとつ残して
2022年04月10日『自由詠』

最後まで渡せなかった返信を書いては消して書いては消して
2022年04月09日『レター』

子を忘れ家を忘れて好きだったおはぎを捨てる祖母だった人
2022年04月08日『忘』

大空に飛ぶため生まれ変わるのだもみじ手の上眠るさなぎは
2022年04月07日『蛹』

遠くまで散る花びらに隠されて明日うまれるみどりは眠る
2022年04月06日『芽』

大雨が降る日はわかる竹刀振る日々が解凍されるにおいで
2022年04月05日『剣道』

幕の内弁当だって底上げをされる時代のぼくの履歴書
2022年04月04日『幕』

歯ブラシも茶碗も持っていったのに置いていかれた花瓶と私
2022年04月03日『置』

加熱する手間を惜しまれ傷心のクリームブリュレはプリンになった
2022年03月26日『加』

一杯の茶を飲む時間一年と二か月ぶりの一人の時間
2022年03月25日『茶』

真冬にも凍ることなく使う人のいないラー油は庫内にひとり
2022年03月19日『辣油』

あぜ道にマリーゴールド植える祖父おまえに摘ますためと言いつつ
2022年03月16日『マリーゴールド

赤さびた線路を夢に見る朝だ車に乗れなくなったあの日を
2022年03月15日『駅舎』

飛び込んだウサギの穴の向こうがわ背中を撫でる手があればいい
2022年03月13日『兎』

飛ぶ鳥も泳ぐ魚も泣きさけぶ赤子もみんな不自由にいる
2022年03月10日『自由詠』

サンキューとこれ見よがしに言う父の声が年々遠くなりゆく
2022年03月09日『3月9日』

止まらない落花ゴミ袋に溜まる10年分の写真と日記
2022年03月07日『止』

三月に間に合ったよと綻んだ桃の蕾をカメラがほめる
2022年03月03日『桃』

階段の先は見えない点々とホコリの上に残る足跡
2022年02月26日『階段』

壁越しに長いシャワーの音を聞く午前一時の大浴場で
2022年02月24日『温泉』

順番に鬼になるのだ下駄箱の枯れ葉机の奥の食パン
2022年02月21日『番』

相槌を繰り返すより雄弁に「またね」「またね」を言い交わした日
2022年02月20日『ね』

濁色も味と笑っている人の暗いところのない生い立ちだ
2022年02月16日『濁色』

ハマグリもアサリも春を望まない桃の節句を人ばかり待つ
2022年02月14日『泥』

昨日まで親友だった三毛猫も他人みたいに鯵を食べてて
2022年02月11日『商店街』

兵士なら優秀だった少年が子守りとあそぶ日々の尊し
2022年02月08日『野比のび太

ふかふかのホットケーキもブランドの服も勝てないつないだ手には
2022年02月04日『掌』

豆まきはさせてくれないママはいつも鬼が来るのを待っているから
2022年02月03日『鬼』

病院の待合室で辿ってる出口を作り忘れた迷路
2022年01月31日『出』

便箋を引き裂いていくマッチでも見られぬ夢の葬式として
2022年01月27日『マッチ』

色づいた牡丹のような人でした崩れゆくのも一瞬でした
2022年01月26日『牡丹』

喫みかたも味も知らないマルボロを一箱ずっと捨てられずいる
2022年01月21日『好きな煙草』

孫の名を忘れた祖父の白髪は記憶のままに切り揃えられ
2022年01月19日『白』

一回は言えばよかった好きだってもう食べれないいつものカレー
2022年01月17日『好』

五線譜を辿る指先ピアノには話せるあまい空色の音
2022年01月15日『譜』

黒船をおぼえているか夕焼けに横浜港は赤く染まりて
2022年01月14日『港』

かまくらに入りたかった滑り台に腰掛けている雪だるまたち
2022年01月12日『滑』

振り上げた拳を映す黒い目はあそびと疑いもせず尾を振り
2022年01月11日『犬』

本能で海ゆく蝶を竹かごのうちから見上げさえずる小鳥
2022年01月10日『自由詠』

車窓からひとり眺める六本木は聞いていたほど眩しくもなく
2022年01月07日『昨日の題からどれでも』