うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

「みずつき12」提出連作+セルフ推敲SOML連作

「水」をテーマに6首連作する短歌企画「みずつき」に参加しました。どの歌にも液体のモチーフを入れたつもり。

一滴の涙もなしに葬式の知らせは午前六時に届く 遺言は川に沈んだ愚痴ひとつ言わずにゆるす人だったから 自惚れた悔悟だろうか酒を飲む約束をしていればだなんて 読む人のいない手紙は止めどきのないまま紙にインクが滲む 最後にと握った肌の感触も消毒液に上書きされた 朝焼けに泣き出す前の曇天の背なを天使の梯子が照らす

一滴の涙もなしに葬式の知らせは午前六時に届く
遺言は川に沈んだ愚痴ひとつ言わずにゆるす人だったから
自惚れた悔悟だろうか酒を飲む約束をしていればだなんて
読む人のいない手紙は止めどきのないまま紙にインクが滲む
最後にと握った肌の感触も消毒液に上書きされた
朝焼けに泣き出す前の曇天の背なを天使の梯子が照らす

「水に流れて」

……ええと、6首目だけ説明足していい?

天使の梯子」、気象としては薄明光線と呼ばれる大気光象のひとつです。厚い雲の切れ間から斜めに差し込んだ光が大気中の細かな水滴で散乱する、チンダル現象によるもの……いや、言葉上の定義はいいか。

つまりね。天使の梯子が見られやすいのは
・厚い雲の層がある
・大気中に細かな水滴がたくさんある(雨の前後になりやすい)
・太陽が低い位置から差し込んでいる(朝方や夕方)
という空模様なのですね。

1首目で「涙もなしに」を出したので、最後は泣き出す前の空にしたら対比になるかなって思って。ちゃんと対比にするなら涙の見える情景が良しなんだけど、空に泣かれて雨になっちゃうと天使の梯子がかからないので……。
その情景を目にした主体が涙したかどうかはわからんけど、まあ前を向いてくれたらいいなって思いました。気持ちが前に向いた後の1首入れるのが構成としてはベターなのかもしれないけど、目に綺麗な景色でとじるのもいいかなって……そういうのが好みなんです。はい。


と、ここまでが表書きです。ここから「わたしはSOMLの連想で詠んだ歌を企画に提出しました」の札を首にかけます。

水と言えば死だよね! という着想で提出するおかげで昨年も今年もひとりテーマがド暗くなりました。民話と神話とSHで育ったので完全に「水=死と輪廻」の概念が形成されてしまっていて……。そしてSOMLのイメージが水なんですよね私ね……。ただしく言うと流れる川のイメージ*1なんだけど。

言葉の舌ざわりだけで詠むので連作だと主体が見えず詰まりがちなのが常なところ、困ったらトーマスのほう見ればよいのは大変編みやすかったです。その結果編みあがったのがこれ(👆)なのは、意識して演目からシチュを離したとはいえちょっとごめんと思わなくもない。特に2首目。すごい楽しかった。

連作の中でモストお気に入りは3首目です。自分は何かできたんじゃないか、時間を心を割いていれば違う道を選んでくれていたのではないか。遺された者の切実でかわいらしい傲慢だと思う。他の歌も気に入ってるけど、もうちょっとしたら推敲し直すかもしれない。

 


そんでもって、意識してSOMLに寄せたのがこちらになります。天使の梯子をね、SOMLの二次創作短歌に詠み込みたかったんですよ。

一滴の涙もなしに葬式の知らせは午前六時に届く 読む人のいない手紙は書き出しを埋めたきりまた紙くずになる 自惚れた悔悟だろうかもう一度会う約束をしてればなんて 真実は滝も知らない愚痴ひとつ漏らさず隠す人だったから 今一度話をしようカーテンの奥に隠したきみを見るため 朝焼けのかげに差しぐむ曇天の背なを天使の梯子が照らす

一滴の涙もなしに葬式の知らせは午前六時に届く
読む人のいない手紙は書き出しを埋めたきりまた紙くずになる
自惚れた悔悟だろうかもう一度会う約束をしてればなんて
真実は滝も知らない愚痴ひとつ漏らさず隠す人だったから
今一度話をしようカーテンの奥に隠したきみを見るため
朝焼けのかげに差しぐむ曇天の背なを天使の梯子が照らす

以下、一から十まで自前の幻覚で構成されています。

年末年始に詠んだのもなんだけど、私は弔辞のことを死んだ人へ宛てた最後の手紙(当人が知ることはないとわかっていながらなお、届いてほしいと宛てる祈り)だと思っているらしいのがとても強く出ているなと思いました。ここで選ぶ語は弔辞のほうが絶対わかりやすいし情景も浮かぶしSOMLモチーフの二次創作短歌らしくもあるんだけど、わかってて譲りたくないのはつまりそういうことなんでしょう。

アメリカの緯度でクリスマス(冬至のすぐ後)で朝六時、日の出前だと思うんですよね。ほんとうに趣味の悪いことを言うんですけど、あの後逃げるように帰って一度眠って、いつも目覚めるより早い時間に電話で起こされてほしい。あの日の会話を知ってるのはトーマスとアルヴィンの二人だけだから、身よりのない彼の訃報は「一番仲が良かった」彼に伝えられてほしいなって。

3首目は純度百パーセントの私のヘキです。そんな場面はなかったけどトーマスにはそういう「もしあのとき」の可能性をいっぱい考えててほしい。

6首目がとても気に入ってるんですがしかし、かげ*2といい差しぐむ*3といい、これぱっと意味わかるのSH鳥居参拝周回クラスタ*4しかいないのでは?という疑念に駆られてもいます。口語体の歌に古語を差し込むものではない。

*1:Q.それ「バタフライ」だよね? A.はい

*2:古語で「光」のこと

*3:古語で「涙ぐむ」の意

*4:「しろいかげ」ってフレーズを聞き取った勢が即行で「光」の意味までたどり着いた