うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

題詠みたんか '21年9月~12月

重力も三十一文字(みそひともじ)も飛び越えて師走蹴飛ばし白南風よ吹け
2021年12月10日『超自由詠』

土曜日に昇る朝日のようなひと眠る間に去ってしまって
2021年12月08日『比喩』

鶏肉を卵でとじるめんつゆが笑うぐらいに喧嘩した夜
2021年12月06日『他人丼』

盲目を知ってする恋1ヶ月ずれたバースデイテディーベア
2021年12月02日『盲』

ばきばきと世界を食らうオーロラはくじらも凍る北極点で
2021年12月01日『凍』

ひだまりで眠り小鳥とたわむれてそういうねこにわたしはなりたい
2021年11月29日『うたの日のねこ』

耳のあるロボットだけが覚えてるでたらめばかりの寝物語を
2021年11月26日『ロボット』

赤リンはマッチの箱に付いている火をつけられるだけの初恋
2021年11月25日『マッチ』

シワひとつないワイシャツと完璧なスリーピースと解けた靴紐
2021年11月24日『靴紐』

うつくしいいきものでした性別の垣根をこえて消費されゆく
2021年11月22日『美男/美女』

顔も知らぬ級友よりも親しげに返事をくれる馴染みのカラス
2021年11月19日『カラス』

踏まれても土にかえれぬイチョウ葉とよき夏の日を思い返して
2021年11月18日『黄葉』

さよならの記憶真冬の晴れ空とサンドイッチは今も苦手だ
2021年11月17日『忘』

五線譜の格子を抜けて泳ぐ子をピアノの声であやして夕べ
2021年11月15日『ピアノ』

家を買い子どもは二人休日はドライブ取られて今があります
2021年11月12日『普通』

振り返り振り返りするシェパードの騎士に守られ米寿の祖母だ
2021年11月11日『犬』

引き止める人もなく旅立つ船を見送る冬の蝶と並びて
2021年11月10日『自由詠』

五年前はじめましてをした店でさよならをする指輪はすてる
2021年11月08日『喫茶店

ジャケットの裏ポケットにしのばせたジッポ煙草を吸わない君が
2021年11月05日『スーツ』

口髭と見張ったまなこ柔らかな中身を守るためのよろいだ
2021年11月04日『サルバドール・ダリ

貧しさを罪と呼ぶのかおはじきのガラスを飴と渡す彼女を
2021年11月03日『貧』

ヤドカリをペットボトルに住まわせる青い鳥などいない世界で
2021年10月28日『ヤドカリ』

家となる大木もとめ飛ぶ鷹を見上げ自由と羨む人よ
2021年10月26日『鷹』

ボスだけが味方です缶コーヒーじゃないほうにも言いたいものだ
2021年10月21日『缶コーヒー』

チョコレートコスモスを嗅ぎ首かしげまた嗅いでいる妻と息子と
2021年10月20日『コスモス』

自然とは戦うものだ大カボチャくり抜きながら祖父独り言つ
2021年10月19日『自然』

寝かしつけ起こし着替えて送り出しハニーバターをトーストに塗る
2021年10月18日『バター』

我慢さえあなたのためと言われても黙って啜る渋いコーヒー
2021年10月17日『我慢』

ニンニクとシソと悩みと恨み言ぜんぶあわせて醤油につける
2021年10月15日『ニンニク』

パクチーが好きだった人ベランダのパクチーだけが知る顔がある
2021年10月14日『パクチー

逆上がりする才能は腕力としたいと願い続ける気持ち
2021年10月12日『才』

守りたい国も命も紙ぺらのひとつで届かない場所にいく
2021年10月11日『守』

自由とは誰にも頼れないことだ舞い降りてきたトンビが笑う
2021年10月10日『自由詠』

胃の奥で喉越しだけのノンアルが叶わぬ恋とぱちぱち笑う
2021年10月09日『炭酸』

缶詰のプルタブを引く気軽さで天の岩戸をノックする舌
2021年10月08日『パカッ』

今はもう彼だけが知る花のいろ無声映画のスターの声と
2021年10月07日『映』

小児科で二十分まだ泣きさけぶ赤児の声を聞き打つ注射
2021年10月06日『賛歌』

空の布団これじゃ三千世界など夢の夢さと烏が嗤う
2021年10月02日『烏』

寝る前にせがんだ絵本読み聞かす声さえ今は夢の向こうに
2021年10月01日『本』

愛情の形みたいだどうせすぐ乗れなくなると言われなかった
2021年09月30日『三輪車』

神は死んだ語りし人の言葉から神を見出す人のありける
2021年09月26日『ニーチェ

オレンジの香水ばかりおぼえてる髄まで焼けた骨の白さと
2021年09月25日『香水』

誰そ彼と知ることもなく公園のいつもの子らと隠れ鬼せり
2021年09月24日『夕方』

オリジナルレシピを作り振る舞った子どもは父となり飲む側へ
2021年09月22日『ドリンクバー』

捨てられるばかりでしたがカブちゃんのおうちとしての余生です、はい
2021年09月21日『ペットボトル』

推し事とうそぶきながらもういない人の眼鏡をゆっくり磨く
2021年09月19日『推』

十六夜が見頃と誉めた人を待つ夜は立待居待も過ぎて
2021年09月15日『月』

邪悪とは正義のことだ終わらない学級会で立たされている
2021年09月13日『邪』

覚えてる赤を求めて三千里イギリス産のりんごを煮込む
2021年09月11日『覚』

海わたり旅する蝶を秋雨が見下ろしている風の吹くまで
2021年09月09日『まで』

スイッチを切り替えてもう秋になるあの日デートに着た服を捨て
2021年09月07日『秋』

若者と呼ぶほど若いこともなくベテランと呼ぶほど長けていることもなく
2021年09月06日『若者』

おはようを言い交わすたび増す熱が相互作用であればいいのに
2021年09月04日『互』

給食で机動かすシーン見ておもしろいよと指差す息子
2021年09月01日『給』