うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

題詠み短歌 2023年

連れ立ってキャリー片手にゆりかもめ煩悩よりも多い欲望
2023年12月30日『連』

誰そ彼と問う人もなく北陸のはまべで消える夕日を看取る
2023年12月29日『誰』

白雪に双子の天使もう二度とやってこないねアルバムが言う
2023年12月26日『雪』

階下から怒声グラスの割れる音サンタは来ない今夜も来ない
2023年12月24日『イブ』

徒人(ただびと)の日々を過ごして二十年ネオンピンクの棺桶を買う
2023年12月05日『徒』

まっすぐに回れないのだ独楽だって優しくふれる指がなければ
2023年11月28日『軸』

少年が映す海わたりの蝶と映さなかった朽ち行く蛹
2023年11月15日『少年/少女』

自由などいらないかつて手に入れた恋のひかりと心中するの
2023年11月10日『自由詠』

出棺を見送る蓋を開けてないから君はまだ生きているかも
2023年11月09日『出』

骨壺に首輪をはめる新しい家にも迷わず帰れるように
2023年11月08日『首輪』

金よりもほしいと乞うた愛さえもいずれいらなくなるのだろうか
2023年11月06日『金』

傷痕は残るでしょうかきんいろの第二ボタンのない胸元に
2023年11月04日『残』

ひとひらも渡したくない制服で笑う写真のなかのあなたを
2023年11月03日『あなた』

帰宅する日は来ないとも言わぬまま海の向こうへ飛んだ隼
2023年10月16日『機』

ビー玉も虹も見えない弾かれたラムネボトルが鳴る低い音
2023年10月13日『ラムネ』

飛ぶ羽を人は持たない国境を越える線路を染める血涙
2023年10月12日『飛』

何者にも阿らないで強くなれ摘まれ続けるシソに語りき
2023年09月20日『阿』

待っていた九十九年の蜜月を今一度手に取り戻すため
2023年09月12日『待』

新しい出来事もなく蝋燭は日々燃えてゆく満員電車
2023年09月05日『毎』

梨のあおをりんごの子だと思ってた稼ぐ苦労も知らずいた頃
2023年09月01日『梨』

顔出しが必須と言われ背景をPC前の自分にしてる
2023年08月24日『リモート』

成仏を願う心と虹の根で再会したい心のあいだ
2023年08月22日『仏』

実際はブレーキ小回り利くらしい猛進だけの僕と違って
2023年08月21日『猪』

転がったペンから恋が始まった未来を夢見ているだけの今日
2023年08月18日『きっかけ』

月面のゆめをアポロが打ちこわし帰る屋敷のないかぐや姫
2023年08月17日『宇宙』

向日葵に似た人だった項垂れる姿を夜に隠して笑う
2023年08月07日『ヒマワリ』

おっぱいがはみ出している腹を撫でる野良よお前はひとりじゃないな
2023年08月03日『おっぱい』

晴れ上がる真夏のような人だった過ぎればうつくしさのみ思い出す
2023年07月26日『夏』

ごつごつの手の熱をまだ覚えてる煙も出ない煙突の先
2023年06月26日『手』

変数を&で繋ぐ過ぎた日を忘れられずに増えていく恋
2023年06月09日『&』

しゃぼんだま屋根まで飛べと歌う子の声だけ遊びに来てる寝室
2023年06月05日『声』

優の字がほしかったんだ丸つけもしてもらえない自習プリント
2023年05月30日『優』

過去のまま進まない家 柱キズ、大好物はカレー(甘口)
2023年05月23日『大好』

合同を証明できる世界では平行線は平行のまま
2023年05月22日『同』

仮留めをしたまま五年結婚も別れもちがうような癒着だ
2023年05月19日『糸』

白く歯をのぞかせている折り鶴が見下ろしている シーツは白い
2023年05月18日『折り紙』

幸せと訊けばさえずる雄雲雀風切り羽根を切られたままの
2023年05月17日『羽』

おいしいはおいしいを呼ぶ食事どき人語を話す猫がまた増え
2023年05月09日『おいしい』

何回のあのねを埋めてきたのだろう別れ話のはじまりの音
2023年05月02日『あの』

カレーにはしめじを入れる常識が崩れた夜に見上ぐ星空
2023年05月01日『カレー』

成長をなかったことにされ今日も韮を刈り取りお浸しにする
2023年04月30日『韮』

鼈甲の眼鏡はいつもゆっくりと絵本を読み上げる声と在り
2023年04月28日『甲』

菜の花が背負う十字を花が咲き取り残されたダイコンが継ぐ
2023年04月26日『菜の花』

真夜中に鶯が鳴く下手くそなギターに勇気づけられて
2023年04月25日『鶯』

虹色のビー玉ひとつ初恋の味と一緒に閉じ込めている
2023年04月24日『ビー玉』

すべらかな饅頭ふたつもみじ手の37℃が蒸し上げている
2023年04月21日『饅頭』

溺れてもいいと手を伸ばしていた頃の熱量もなく五年目の恋
2023年04月19日『溺』

ボウフラを喰いつつ今も生きている祖母の遺した鉢のメダカら
2023年04月18日『ボウフラ』

ステージの夢を吹き込む放課後のトランペットは放屁で笑う
2023年04月17日『ラッパ』

辛の字も一本足せばと言う人に戸惑う生まれながらの幸だ
2023年04月11日『幸』

三年は粘れと言うが石の上に種を蒔いても根付かないので
2023年04月06日『一年生へ送る一首』

東京の入学式も雪が降る道産子たちに桜は怯え
2023年03月24日『季節外れ』

治らない心の穴を愛おしく思わんネコの形の穴を
2023年03月18日『治』

幸福な生活 妻と子が2人家と車があるから、それで?
2023年03月11日『福』

自由であれと言われるほど不自由ヒトは世界を枠組みで見る
2023年03月10日『超自由詠』

待ち侘びたひとの名を呼ぶきみはもう十月十日も愛されている
2023年03月06日『侘/寂』

0点の評価見えない10を足すわたしはきょうもがんばりました
2023年03月02日『零』

他愛ないお喋りだったベッドから見上げる祖母に思い出すのは
2023年02月28日『喋』

ふつふつと呟く鍋とふたりきりアクを抜かれて楽になりたい
2023年02月22日『温』

節つけていとしよいこと繰り返す子守唄だけ耳に残って
2023年02月21日『いとし/こいし』

就活のポスター通り黒染めとスーツに落ちる一人また一人
2023年02月20日『秩序』

愚かだと言いたくば言え黒板の文字が恋したきっかけなんて
2023年02月19日『愚』

財宝の振りを続けて二十年はげる鍍金もなくただの人
2023年02月16日『金』

アネモネ花言葉まで知っている黙って一輪挿しに活けつつ
2023年02月15日『アネモネ

勇敢と蛮勇の差を知っている知恵と良き友、地位、金、生まれ
2023年02月14日『勇』

霞む日が来るのだろうか舞浜で繋いだ皺だらけの手のこと
2023年02月13日『舞』

散骨は沖縄がいい唯一のマリンスノーになる夢を見る
2023年02月12日『マリンスノー』

自由とは何者かにはなれないと諦めることみぞれが落ちる
2023年02月10日『自由詠』

贅肉が増えていきます愛せない重さと笑う母の一声
2023年02月09日『肉』

十年が解凍される本棚の陰で見つけたピーちゃんの羽根
2023年02月08日『羽』

2秒しか保たずに消えるあまい香は勿忘草と名をつけられて
2023年02月06日『勿』

過去形にingを付けるような恋カバンに忍ばせていた手袋
2023年02月05日『ing』

いつ来ても古巣に待っていてくれた練習室のピアノは消えて
2023年02月04日『巣』

初雪と駆け出した子を抱きとめるみぞれ混じりの雨を見上げて
2023年02月01日『霙』

手袋をポケットに入れ君からの寒くないのを待ってる右手
2023年01月25日『寒くない』

パパとした内緒話を耳元でナイショと教えてくれる四歳
2023年01月24日『ない』

明日こそ会えるだろうかお土産の生キャラメルは喉に張りつく
2023年01月23日『生』

ヒルにもプライドはあるスプレーで吹いたインクを弾く白羽根
2023年01月20日『羽』

鈍行の恋です同じホームで乗り込んで一駅先に降りるみたいな
2023年01月19日『鈍』

街灯に集まる蛾より本能に支配されてる午前一時に
2023年01月14日『蛾』

来年は赤ちゃんちゃんこの私にも忘れたくない放課後がある
2023年01月13日『にも』

ポチという名前になったメモ用紙3枚ぶんの候補に勝って
2023年01月11日『犬』

大空を舞うのも自由鳥籠で飼われて生きていくこともまた
2023年01月10日『自由詠』

水槽で飼うはずだった思惑は外れ朝日に死んだ水月
2023年01月06日『思』

始まりは一枚のキス夕暮れの音楽室にふさわしくない
2023年01月05日『始』

運だけはあります君と巡り合い暮らせているのが証拠ですから
2023年01月04日『運』

訥々とみそひともじを繰り返し言の葉色に川を染めたし
2023年01月01日『令和五年の抱負』