うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

題詠みたんか6(~'20.8.13)

放牧とうそぶいているただいまはもう聞けないのちゃんと知ってて
2020年08月13日『放』

友だちを追い越し伸びる白雲は折れてようやく仲間になれる
2020年08月12日『入道雲

ゆっくりと肌を這う手の熱量であばかれていく知らないわたし
2020年08月11日『?』

持たされた水筒だけは守れたねカナと呼ばれてヒグラシの声
2020年08月07日『暮』

柵を跳ぶ羊を呼んでお茶会を開くひっそり貘が来るまで
2020年08月06日『眠れない夜の対処法』

一晩の娯楽のはずが誤算からずるずる続く濃厚カレー
2020年08月05日『誤』

愛されて育つトマトは背も高く子作りはまだする気になれず
2020年08月04日『トマト』

ブラウスのベールをかぶりひそやかに息する鎖骨の影をみている
2020年08月03日『骨』

手遊びでパンツパンツと笑ってた君はいつから褌なのか
2020年08月02日『パンツ』

紫陽花を一輪つんで笹舟は子どもの熱い手をはなれ行く
2020年07月30日『笹』

ほんのりと甘い麦茶はカロリーと家族のための愛情だった
2020年07月29日『麦茶』

黒髪のロング清楚なワンピース売りたい層に合わせて飾る
2020年07月28日『スイーツ』

指先の白さだったり校庭を見下ろしている横顔だったり
2020年07月27日『たり』

数独はこんなに得意にんげんをやっていくのは上手くないけど
2020年07月22日『独』

ワレワレハウチュウジンダゾ学校に行かなくていい ねえ扇風機
2020年07月21日『プロペラ』

ゆっくりと大人になれよアサガオの蕾に声をかけている孫
2020年07月20日『大』

杯をひっくり返して何千回水面におよぐ生命をみる
2020年07月17日『2300杯目に起こった奇跡』

青空が落ちてきた日を思い出すぬるいベッドと窓のない部屋
2020年07月16日『青』

ひとつふたつ解散してく子どもらの群れを見送る夕映えの園
2020年07月15日『映』

ただしさもやらねばならぬも脱ぎ捨てて枝に作ったいかだで眠る
2020年07月14日『ジャングル』

ふたつずつタピオカを吸う放課後の3人 いつものふたりとひとり
2020年07月13日『タピオカ』

型にはまる生き方だってまた自由三十一字も銀の指輪も
2020年07月10日『自由詠』

右左もう一度みぎ指示を出す自称ただしいかみさまとやら
2020年07月09日『左』

さいごまで気づかなかった君の淹れるコーヒーだから好きだったこと
2020年07月08日『好』

初めてのおかずも余らなかったのにレシピも覚え書きもふたりぶん
2020年07月07日『余』

ぱちぱちと喉をくすぐり隠しごとはきだしちゃえと唆される
2020年07月06日『炭酸』

耳のおく夢をみている巻き貝がざざん、ざざざん、窓ごしの雨
2020年07月03日『波』

ゆっくりと紅茶を淹れるたっぷりのほうが美味しいから2人ぶん
2020年07月02日『ティー

新宿も渋谷も忘れている夏だ膝丈ほどのひまわりが咲く
2020年07月01日『夏』

折半をさせられてきたお年玉お菓子洋服人形あの子
2020年06月30日『折』

火曜日の午後4時サッカー部のない日約束してるわけじゃないけど
2020年06月29日『ベンチ』

柵を越えた一万匹目の仔羊がカーテン越しの朝日にとける
2020年06月28日『不眠症

じゅっぷんを数えて眠る夕立ちも子どもの声も遠くに置いて
2020年06月27日『分』

数行を万年筆で書き足して今日もLINEの通知はこない
2020年06月26日『筆』

流水に晒されているそうめんは締まり心も冷ややかになる
2020年06月25日『流』

秒針を飲み込むように生きているあと100周で3時20分
2020年06月23日『秒』

先輩とチーフと妻と母親の仮面を外し素顔の仮面
2020年06月22日『面』

同胞はまたひとり去りゆっくりとくたびれてゆく私のように
2020年06月19日『バナナ』

ナナホシを背負って生きる七十で足りぬ命を糧としながら
2020年06月18日『てんとう虫』

日も落ちて夕焼け色のフレームをかけた横顔ぬすみ見て夜
2020年06月17日『夕』

前髪を掴んで引いたまさかその、抜けるとは思わなkごめん
2020年06月16日『チャンス』

不可能なゴールへ進む不誠実となじられる理不尽な未来へ
2020年06月15日『不』

虎の子の10万円は父の手に渡り箪笥の肥やしとなった
2020年06月12日『箪笥』

借りもののピンクで飾り大群の威を借りやっとふえる鳥たち
2020年06月11日『フラミンゴ』

縛られてフロウとライム地下街の舞台の上で自由を歌う
2020年06月09日『FREE』

あなたばかね紅に香水つけたまま優しい夫の振りしてるのね
2020年06月08日『演歌の歌詞みたいな短歌』

言いさしをそのままにして戸を閉める夜にはこじれていると知ってて
2020年06月04日『言』

かみさまもかなしいのかな赤い目の娘がぽつり 麦茶をすする
2020年06月03日『水無月

遅咲きのツツジの蜜を吸う虫よお前もひとりで生きていくのか
2020年05月25日『蚊』

一昨日と同じ昨日と同じ今日 明日も同じと信じられること
2020年05月15日『ラッキー』

ばさばさとビニールがなく5年ものの思い出なんか食わせてごめん
2020年05月11日『擬音』

Zoom越しの「ばあちゃん」を聞く前に見たときはふにゃふにゃだった赤子の
2020年05月09日『育』

出立は明日の8時だもう着ないセーラー服にカバーを掛ける
2020年03月23日『出』

大空は天井もない壁もない穏やかに死ぬ自由もないが
2020年03月22日『空』

四月から東京へ行く ヒマ?なんて君を呼び出せるのも今だけ
2020年03月20日『今』

息子らが家を出てからご無沙汰の天ぷら蕎麦を今年は5杯
2019年12月31日『蕎麦』

おやすみと通話を切ったそういえばまた明日ねと言われなかった
2019年12月29日『死』

まん丸のチーズを齧るほんとはさトマトと一緒になりたかったね
2019年12月28日『円』

お湯張りをします ご飯が炊けました 機械の声をなぞってひとり
2019年12月20日『寂』

どうせまた読まないでしょう冷え切った作り笑顔と皮肉の空気
2019年12月13日『伏せ字』

一歩ずつ足を進める僕たちを回し車がからから笑う
2019年12月12日『進』

蒸し焼きになるまで籠るのぼせてもどうせあなたの声は冷たい
2019年12月11日『サウナ』

大空が自由に見えるしあわせを知らないねえとツバメが笑う
2019年12月10日『自由詠』

ありがとう元気になった にこやかに礼を言います使い切ります
2019年12月09日『元気』

鍵付きの日記を開く書き込んだペンは気持ちと一緒に捨てる
2019年12月04日『ペン』

うそつきの赤いほっぺた見上げてる折りたたみ傘カバンの底で
2019年11月29日『中』

白線を落ちたら地獄おさなごの遊びみたいな恋をしている
2019年11月26日『落』

ゴキゲンでにこにこしてて穏やかで無垢で無害で都合の良い子
2019年11月25日『可愛い』

切れもせずたなびく袋細長い金魚のふんは未練がましく
2019年11月24日『糞』

円陣を組んで掛けごえ体重の全くかかっていない右肩
2019年11月20日『繋』

カフェインを捨てさせられたコーヒーを私のためじゃなく選ぶ 飲む
2019年11月16日『コーヒー』

どっちかを選べる権利パパとママどっちも選んじゃだめなんだって
2019年11月14日『権』

きっと僕が一番長い友達でそのこと以外なにもしらない
2019年11月13日『識』

誰よりも笑顔をくれる姿見に映った私 がっこうやだな
2019年11月09日『鏡』

家じゅうの結露を拭いた今日だけは僕と一緒に泣いてくれるか
2019年11月05日『住』

この台も俺に似てくる真っ黒な穴に落ちてくだけの無駄玉
2019年10月29日『パチンコ』

Eテレをひとりで見てる平日に頭を撫でた手のひらがある
2019年10月26日『いる』

アリクイは怖がっている顎を上げ半分下りた瞼の奥で
2019年10月03日『顎』

赤くないルビーのことよ黒髪でちょっとつり目で声が低くて
2019年09月02日『サファイア

コーヒーと蜂蜜むかし教わったレシピじゃ母の味には足りない
2019年08月14日『カレー』

丑の日と囃し立てられドードーの後に続けと追い込まれてる
2019年08月13日『鰻』

叫んでも届かないから明け方のシーツの熱を確かめている
2019年08月03日『叫』

縁側にカルピスひとりセミ捕りに行ったぼうやを待ちわびている
2019年08月01日『汗』

黒みつときな粉をかけるところてんよお前も知らぬ顔をするのか
2019年07月31日『心太』

ゆっくりと綻んでゆく朝顔のはじらう色を確かめている
2019年07月28日『覗』

われわれはうちゅうじんだと笑う声この子もいつか父になるのだ
2019年07月21日『扇風機』

けんちゃんを知っていますか交差点で頭を垂れるヒマワリに訊く
2019年07月12日『待』

長男と三男が押す団子でも挟まれっ子は気苦労がある
2019年07月08日『真ん中』

ゆりかごを夢見て散った人間のはんぶんたちをティッシュでぬぐう
2019年07月02日『育』

クリスマスケーキだったらくさってる歳だ今夜もチューハイを飲む
2019年06月28日『完全数

封をして無いことにする思い出の箱に埋もれて寝る場所もない
2019年06月23日『箱』

ミルキーを鞄に入れる初恋の顔はとっくに思い出せない
2019年06月22日『ずっと』

たんたんと挨拶をする昨晩のケンカは胸の奥にしまって
2019年06月12日『凪』

身動きもとれない電車緊密にひとりとひとりが集まっている
2019年06月05日『寂』

思うほどおいしくなくて弟の皿から取ったイチゴを戻す
2019年06月03日『思』

残り物の頭をかじるカスタードだって愛している人がいる
2019年05月28日『残』

人生を乗り越えなくちゃ点数もわからないまま明日も笑顔
2019年05月27日『テスト』

親子丼に一味をかける思春期の娘 そういうところも同じ
2019年05月25日『丼』

すり鉢で丁寧に擂る胡麻の香に恨みつらみをよく練りこんで
2019年05月21日『丁寧』

改札で分かれて歩く暗闇で思い出す貴方が一番好きだ
2019年05月20日『省』