うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

題詠みたんか5(~'19.5.17)

ひとが皆アリのようだと強がって見ているこども保健室の窓
2019年05月17日『窓』

胸のリボン高校生の思い出を娘のくるみボタンに託す
2019年05月14日『ボタン』

いつか言うつもりだったんだ快晴が白い目で見る喪服の僕を
2019年05月13日『いつか』

七日だけ恋をさせてよ麦わらで編まれた籠で蛍がひかる
2019年05月11日『恋』

タンポポの綿毛を飛ばす花びらで好きを占う季節は過ぎた
2019年05月07日『吹』

着けてるし一度だけだし今日もまた罪を重ねる口実にする
2019年05月06日『コンドーム』

アオハルと読むらしいですイマノコはひとりのんびり訓読みをする
2019年05月05日『青春』

確(しっか)りと小指を握る紅葉の手わたしはきみに生かされている
2019年05月04日『確』

大粒の真珠を着ける少しずつ開いた距離を今日もごまかし
2019年05月03日『遠近法』

完璧な家族を目指す僕達は週に一度は他人に戻る
2019年04月28日『完』

寝る前の30分を繰り越して今使いたい 1分でいい
2019年04月23日『分』

一歩ずつ進むしかない飛車角になれはしないし成れば金だし
2019年04月22日『歩』

冷蔵庫の奥でキャベツの千切りとやせたもやしの恋が始まる
2019年04月19日『箱』

赤い目の娘に四つ葉を探されて困った顔をしてるカタバミ
2019年04月17日『クローバー』

表札のコケを拭き取る明日から使わなくなるSATOHの白さ
2019年04月16日『苔』

花の芽に水をやるよう毎日の笑顔にありったけの好意を
2019年04月15日『苗』

しわくちゃのシャツも光るおでこだって今はすっかり可愛いところ
2019年04月14日『慣』

行き先も知らずに落ちる青空も青い海をも知らぬ雨粒
2019年04月10日『自由詠』

詰まる喉で涙を殺すもう見せる人はいないしハンカチもない
2019年04月09日『涙』

アスファルト割って芽生えるタンポポのような懸想を育てひと月
2019年04月05日『芽』

少年よ大志を抱け銅像は語る勇気が欲しい者にだけ
2019年04月04日『志』

欠けもせず花ごと落ちている桜おまえも椿に憧れたのか
2019年04月03日『首』

春風のせーので開く桜たち置いていかれたつぼみがふたつ
2019年04月02日『号』

春の陽に溶かされていくひと時の夢を抱えていた二文字たち
2019年04月01日『令和』

ザリガニを小枝でつつく勝ち負けを考えもせず振り上げる爪
2019年03月28日『池』

空を飛ぶ鳥というなよこのままじゃ帰る場所さえ探せなくなる
2019年03月25日『自由詠』

昨日まで友だちだったタンポポが他人みたいな顔する四月
2019年03月22日『花』

歳月に傷つく前の僕たちをまっすぐ見られずビールを呷る
2019年03月05日『1800カラットのダイヤと同じ美しさ』

こわごわと握り返した左手を離せば空もモノクロだ また
2019年03月04日『恐』

昨日まで笑ってくれたタンポポも他人のフリをする夜明け前
2019年02月28日『町』

夕焼けを見上げてひとり夢でさえなくした色を思い出せない
2019年02月27日『さえ』

リモコンを押す気軽さで心ごと過去に未来に飛ばされている
2019年02月19日『リモコン』

ひとが皆けもののように生と死と愛だけ知っていればいいのに
2019年02月03日『獣』

人も犬も雪を見るなか梅だけが春を見つけてよろこんでいる
2019年02月01日『如月』

髪も肌も子どものようを目指すのに泣くことは何故だめなのかしら
2019年01月26日『髪』

チョコレート レーズンバター ウイスキーに油が合うと知る人と飲む
2019年01月24日『油』

先生に見えないように昼休みぼくを励ます布のピカチュウ
2019年01月20日『小学校』

今日もただ努めて眠る生きるとは食べて寝ること起きて泣くこと
2019年01月19日『努』

思い出の整理という名の並び替え断捨離にはまだ生々しくて
2019年01月12日『まだ』

大仏の笑みとはつまりこわいって言われてたのか鎌倉で知る
2019年01月09日『大仏』

せりなずな、歌う娘は道端のぺんぺん草に首を傾げる
2019年01月07日『春の七草

段々と積み上げて来た関係のてっぺんに見えたのは断崖
2019年01月06日『段々』

靴ずれがおきないように灰に残る足跡測る知らない老婆
2019年01月04日『シンデレラ』

アパートで峠を越した風邪だとも言えないLINEで繋がる家族
2018年12月31日『越』

黒ければ人に疎まれ白ければ群れに疎まれ泣くはぐれ鳥
2018年12月28日『カラス』

薔薇園に城を構える女郎蜘蛛の腹ばかり見て膨らむ蕾
2018年12月27日『蜘蛛』

明日には捨てられること知っていて花のふりするポインセチア
2018年12月20日『赤』

赤い糸を編み終えるまで考えること許しますあの人のこと
2018年12月18日『毛糸』

指編みのマフラー きっと僕よりも君の手のこと知ってるのだろう
2018年12月02日『マフラー』

牛丼のメニューみたいだアピールをするなら手軽で安いことだけ
2018年11月29日『並』

半月と一緒に聞いた鐘の音明日からまた機械に戻る
2018年11月26日『17時01分』

行き先を知ればからだは竦むから足元だけを見ながら歩く
2018年11月22日『将来』

公園で知らぬ子どもとだいじょうぶ?大丈夫ってやりとりをする
2018年11月21日『大丈夫』

流行らない交換ノートを続けてる私と1週間後の私
2018年11月20日『ノート』

外された第二ボタンもひねくれた1タス1も愛おしかった
2018年11月19日『田』

平凡に生きていたいね一戸建て子供は2人だった世界で
2018年11月18日『凡』

飽きるほど日だまりにいるサボテンは野良のミイ子の恋も知ってる
2018年11月17日『飽』

秋寒を窓の向こうに置きふたり毛布の下で最高気温
2018年11月16日『最』

ゆっくりと布団を叩く太陽の熱が驚き逃げないように
2018年11月15日『叩』

結婚し名前も変えたあの人の面影だけを残す番組
2018年11月13日『忘れられない人』

腰痛にうめくじいじの馬の背でもっとと笑う孫の無邪気さ
2018年11月11日『もっと』

象を呑んだ蛇を見る目は失われいい帽子だと褒める大人ら
2018年11月08日『蛇』

親指のつけ根の線をゆっくりとなぞるあなたは置いていかない
2018年11月07日『占』

ぱちぱちと拍手の音は軽やかに真っ赤に燃える靴履き踊る
2018年11月05日『踊』

誰にでもおんなじ I のはずなのに君へのメールだけ俺になる
2018年11月03日『英文』

ありのままじゃ生きていけずに今日もまた上に貼られる割引き価格
2018年11月02日『価』

さそり座の女を歌う今日もまたいて座ですとは言い出せないで
2018年11月01日『蠍』

言い訳を探して歩く寒いだけ手が冷えるだけ繋いだ右手
2018年10月30日『だけ』

背を撫でて欲しがってるのは僕じゃない冷えきった手に熱を届ける
2018年10月29日『愛撫』

夢 未来 何でもつかめ今はただ乳房をつかむちいさなもみじ
2018年10月28日『可能性』

もう丈も短いけれど捨てられず出してはしまう手編みセーター
2018年10月26日『しまう』

言わなけりゃよかった恋を口にして今朝も「ごめん」を目覚ましにする
2018年10月25日『見た夢を歌にする』

階段で弾む足音勝つときはグリコを選ぶパパのやさしさ
2018年10月22日『じゃんけん』

化粧品の気難しさもまだ知らぬ真っ赤な紅を纏う唇
2018年10月21日『唇』

愛し子の黒髪を梳く蓬莱の枝も燕の貝も隠して
2018年10月20日『枝』

小指だけ真っ赤に塗ったマニキュアと今日も社会をやり過ごします
2018年10月17日『指』

牛乳に浸した苺スプーンで潰したらまた朝に備える
2018年10月16日『潰』

体脂肪率一桁と知っててもでぶと思われてる気がするなあ
2018年10月13日『豚』

幼な子も知っているのよ笑うこと何も知らないふりをすること
2018年10月12日『幼』

自由ほど愛嬌のいるものはないしゃなりと歩く黒い野良猫
2018年10月10日『自由詠』

雨の日に痛み出す喉 二年前言えずに飲んだ言葉の欠片
2018年10月09日『喉』

たっくんとけっこんするの 許嫁なんて知らない子供が笑う
2018年10月08日『許』

吉兆を流した水の温かさ深夜三時のオムツのにおい
2018年10月06日『兆』

一曲のために揃えた薄桃の爪で小さな裸体を叩く
2018年10月04日『曲』

iPhoneで聞いた彼らの歌声で今日も乗り越えます空元気
2018年10月02日『元気』

乗る人もなく揺れているブランコに風の子供があやされている
2018年09月30日『揺』

大風に備えた家の軒下で忘れ去られた風鈴が泣く
2018年09月29日『風』

こんじきの頭を垂れる稲穂らをひとり眺める満員電車
2018年09月28日『米』

豚肉のパックで笑うブサキャラをつついて笑う妻の横顔
2018年09月27日『カワイイ』

ゆるやかに時の流れるリビングでひとりざわめく心臓の音
2018年09月21日『音』

ひとつだけ落としたふりの手袋の代わりに繋いだ手を振り歩く
2018年09月20日『落』

これこそが虚無の味だと嘯いて喉を流れるストロングゼロ
2018年09月18日『味』

私たち紅葉みたいね離れるとみるみる褪せていくところとか
2018年09月16日『紅葉色』

ありふれた日記の中に織り交ぜるひとさじ、甘い小さな嘘を
2018年09月15日『好きな本』

伸ばしかけ下ろした指の冷たさは喉に留めたあのね、の味だ
2018年09月14日『あの』

この中に私の魂以外のものが入っているおどろき
2018年09月13日『この』

どうしてそんなに捻くれてるんだ!と夫の怒声 お互い様かな
2018年09月12日『斜』

つながりは思い出じゃない指輪でも小指でもなく一枚の紙
2018年09月10日『自由詠』

丁寧に敷き詰められた白米とプラパック入りヘタ付きトマト
2018年09月09日『怒』

指先のやわらかさだけ覚えてるかんかんと泣く踏切の音
2018年09月08日『踏切』