うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

「みずつき」提出連作

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連作企画に参加したいしたいと思いつつ、イメージが膨らまず挫折すること数回。
ちょっとずっこくしてやっと参加しました。
短歌を言葉で補足するの、勝ちか負けかで言えば負けだと思うけど語りたいので語ります。そして出しておいて何なんですけどセルフアレンジしたのでそっちも見て。

 

眠れずに川を見に行く黒々とまなこのような水面に語る

情景にすごく既視感があって、前にも同じもので詠んだのかと思った(なかった。)欄干を両手で掴んで水面を覗き込んでいる情景、たぶん好きなんだろうな私……。これは私の趣味なんですけど、手を伸ばせば掬えたかもしれない死んだ人を想うのは孤独な夜が似合う。

滝のなか投げた木の枝言い出せぬ願いと共に沈め底まで

>突然の滝<
この脈略のなさ、言い訳ができない。
それぞれの歌に水でできたものをひとつ入れるマイ縛りで詠んでいて、川よりやさしくなさそうなのを持ってきたかった。初めから沈めるつもりなら石を投げるだろうし、主体は本当は沈めたくなかったんじゃないかな。

白雪に寝転び腕を動かせば地面に残る天使のかたち

>突然の雪< この脈略の(ry)
いやこっちは言い訳はあるんですよ。時間軸が飛んだのを伝えたくて、一回川から離れたかったの。2首目でいきなり飛ぶのもかなと思ったんだけど、繋がりとしては逆のほうが自然だった気は正直しています。
何かいっこ、きれいで楽し気なものだけでできたのを入れたかったんですよね……。絶望が映えるからもとい語り部にとって大切な思い出だったものを見せたかったので。陰りのない情景だけど主体は下を向いているのが個人的な拘り。

肺に満ち泡立つ水は最期までもがき苦しみ沈んだ証

言葉選びは悩んだけど絶対に入れるつもりだった。
あのね、溺死した人間は肺のなかに溜まった水が泡立っていることが多いらしいんですよ。吸った息と水が混ざって。あとは下句の通りです。落ちてからはあっという間な感じを出したくて語調にそこそここだわりました。もはや物言わぬ肉体に残った苦しみの証、よくないですか。
沈む→溺れるとか願いを諦めたひとが命さえ落とすとか、2首目の後ろに来たほうが流れがすっと通った気はしています。白雪の「かたち」とこの歌の「あかし」で音を合わせたくてこの順番で通しました。次の歌に繋げるのに気分をぐっと下げたくて強い言葉叩き込んだけど、苦しみはもちっと具体的な言葉にできたらよかったね。

涙さえ川となるのだ尽きもせぬかなしみがなぜ海とならずや

この連作は「かなしみがなぜ海とならずや」から膨らませて組みました。それもあっていちばん気に入りだったりします。言いたいことが言えたのもあり。
3句目を「あふれ出る」とちょっと悩んだけど、湧き水っぽいなと思ってこちらに。なんかこう、内からわき出るより雨が止まないような受動的な感じにしたかったんですよね……。
時間軸は1首目と同じなのが伝わってたらいいなあって思います。ひとけのない夜の川べりで、落ちる涙が音もなく水面に吸い込まれていくような情景イメージ。

海をゆく蝶を見送る羽ばたきよどうか春まで届けと祈る

蝶は(死んだ)魂や再生の象徴だといいますので。魂だけになって、海を越えて暖かなところまで飛んで行ってくれたらいいよね。青空にひらひら飛んでいく透明な翅の蝶を見上げる情景、わりとかなり気に入っています。
アサギマダラという海を渡る蝶がいるんですよ。春と秋の2回わたりをするんですけど、彼らは鳥類とは違い渡った先で卵を産んだあとは死んでしまう。だからわたりをする蝶は皆、知らない土地に向かって飛んでいる。
あとね、3首目と対比をさせたかった。白雪、地面、はねを持つもの。「雪が溶けたら春になる」の話が好きで、そのイメージを借りました。*1いちおう1首目とも揃えているつもり。

 

○開き直った 観劇感想短歌アレンジ

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完全に二次*2に寄せるならこんな感じかなあの歌たち。加えて、時間置いたら気になってきた部分をちょこちょこ変えました。
白雪、いいじゃん真っ白で翳りのない思い出があってもと思ってたんですが、やっぱり浮くんですよね……。ファンアートと言い切るなら人物の説明がいらないからいっそ抜くかと思って。願いを沈め、思い出は奪われ、己も沈んだって線が(私のなかで)繋がったのではっぴー。
4首目も客観的なわかりやすさを放って見たいものを見に行きました。わかりやすくするなら変えるべきは読み解きに知識がいる上句だろうとは思う。でも検死がいいなって……。
もう家族のいないアルヴィンの検死結果を知らされるのはトーマスかなと思いまして。何もかもに取り返しのつかなくなった後、せめて苦しまない最期であってほしいという想いさえ打ち砕かれるの、いいなって思ったんだ。すみません趣味です。
言うて一般人がご遺体の解剖に立ち会えるわけもなく、情景は説明を受けた主体の空想です。(という妄想です。)まっすぐ切り開かれた喉から泡が弾ける幽かな音が聞こえる光景。
6首目はせっかくだから風と仲良くなってもらおうと思いました。

*1:理科のテストで書かれたら「その発想は大好きです!!」って書き添えて×にするけど。科学の枠で考える訓練だから……

*2:SoMLの視覚イメージに嗜好と幻覚を限界まで突っ込んだ