うたをよむなり。

ねずみです。あちこちで詠んでる詩歌のたぐいをまとめようとおもいました。

題詠みたんか3(~'18.4.15)

右側が優先されて歯ぎしりに参加できない左の奥歯
2018年04月15日『噛』

分岐路で選ばなかった後悔が一時停止を繰り返し押す
2018年04月13日『止』

カラフルな魔法少女に憧れて片耳にだけピアスをつける
2018年04月04日『ミラクル』

禁ずれば破ることだけ夢に見る開かずの部屋の金色の鍵
2018年04月03日『誘』

うれしいも寂しかったもごめんねも声にできずにシチューを混ぜる
2018年04月02日『シチュー』

上げた手に左の頬を差し出して撫でてくれると願ってた頃
2018年03月28日『左』

まっすぐな未来は時に暗く見え閉じた扉に憧れる夜
2018年03月27日『閉』

糸玉を千切れぬようにほどいてく 昨日はごめん 私もごめん
2018年03月25日『ほどく』

行先を知らせぬままに家を出る二児の母とは暫しの別れ
2018年03月24日『別』

チリ一つないキッチンは眠りゆく水も通わぬモデルハウスで
2018年03月23日『キッチン』

コーヒーの香りを深くひと呼吸肺に凝った悩みを捨てる
2018年03月22日『喫茶店

体面を捨てられるほど強くなく我欲は消せるほど弱くなく
2018年03月21日『体』

働けど金も娯楽もない暮らし未来の代わりにじっと手を見る
2018年03月20日『五』

何色に咲くかも知らぬみどりごは萼に包まれまどろんでいる
2018年03月19日『蕾』

ぐるぐると絡ませるほど増えていく謎のコードとマイナス思考
2018年03月15日『スパゲッティ』

白砂を涙で固め積み上げるどうせ崩れる夢と知りつつ
2018年03月14日『砂』

どこにでも有ると書かれたマグロさえ今や希少な高嶺の魚
2018年03月13日『魚偏』

家族にも隠し夜ごとに留守にする夢の世界で今夜も生きる
2018年03月12日『留守』

デザートに出した果実は貪られこれ見よがしに結ばれた茎
2018年03月11日『さくらんぼ』

住む人の絶えて久しいかやぶきの屋根で雀の親子が遊ぶ
2018年03月10日『自由詠』

行列の意味も忘れたエクセルの中で溺れた数字をすくう
2018年03月05日『列』

戯れのように疎まれ来る朝だ嫌われものの涙も知らず
2018年02月26日『月曜日』

わがままに伸びた手足が学ランのポケット目掛け飛び込んでいく
2018年02月25日『少年』

今風を意識するのは流行に置いていかれてるという自覚
2018年02月24日『今』

平凡になりたかったとスーパーでB級品の野菜が叫ぶ
2018年02月13日『平』

福を呼ぶ声の数だけ幸があり寒空で泣く鬼の子があり
2018年02月03日『福』

解なしと言われることに怯えつつ今日も掛けます変数ひとつ
2018年02月01日『因数分解

配役は変えられないと諦めて喜劇と暗示をかけて生きてく
2018年01月30日『劇』

どこまでも泳いで行けるほうき星連れを探して家を夢見て
2018年01月27日『流星』

悔しさを湯船に溶かし捨てた日の洗濯槽が驚いている
2018年01月26日『風呂』

ボロボロのくまと一緒に手放した誰も呼ばなくなったみーちゃん
2018年01月24日『教科書の落書き』

「ママ? あのね、雪、うん、帰る」少しずつ左に回る生徒の電話
2018年01月22日『舞』

オゼキだと言えずに今日もオオゼキの振りをしているセールスマンだ
2018年01月21日『関』

「このパンの中はジャムです」名前だけアンパンマンの笑顔が並ぶ
2018年01月19日『ジャムパン』

早朝に凍える草を痛めつけ子らに踏まれて消える命だ
2018年01月18日『霜』

クリスマスライトを脱いでいそいそと春の準備を始める桜
2018年01月17日『飾』

完璧と言われることを諦めて美しくあるミロのヴィーナス
2018年01月16日『黄金比

今日もまた自信を育て損ねては自意識ばかり持て余してる
2018年01月14日『自』

まっさらなガラスの靴は愛玩を許す印と知っていたけど
2018年01月13日『ガラス』

給料と義理と名誉に支払われ私はとうに品切れました
2018年01月12日『公』

びょうびょうと深夜にほえる飆(つむじかぜ)おまえも友を喪ったのか
2018年01月11日『「犬」を含む漢字』

ブレーキをかけてくれるな親友よ言い残し今日凧は飛び立つ
2018年01月10日『自由詠』

マイナスにマイナスを充てトラブルをゼロにしようという愚かしさ
2018年01月09日『マイナス』

温もりや未来を知らずゴミ箱に旅立っていく2億のこども
2018年01月08日『精液』

妻は風呂娘はゲーム猫だけが釣られて口を開いてくれる
2018年01月07日『あくび』

丸四角焼くか煮込むか正月のひと時でさえ和解は遠い
2018年01月06日『餅』

友情も愛も時間も金もなく悩みを溶かすストロングゼロ
2018年01月05日『消去法』

一日を過ごせば増えるペケマーク花丸をする勇気もなくて
2018年01月03日『カレンダー』

からっぽの部屋に響いた晩鐘はかつてと同じ音をしていた
2017年12月31日『鐘』

虚構だと分かってなおも作り込む一夜忘れるための演目
2017年12月30日『虚構』

洗濯と買い物を終え見上ぐ空働くために休む虚しさ
2017年12月28日『休』

来年はこれをしようと決めながら延ばし延ばして来たる年の瀬
2017年12月25日『来年』

忙しなく生きてどうする七面鳥明日の晩には肉になるのに
2017年12月24日『七面鳥

どの娘から貰ったのとも聞けないで青いリンゴの芯をくり抜く
2017年12月23日『ナイフ』

嘘吐きを生きていくにも疲れはて白い枕を抱えて眠る
2017年12月20日『疒』

悪いのはあなたでしょうをカレーごと呑んでスプーンをかちかち鳴らす
2017年12月19日『スプーン』

息をつく暇もないほど与えられ良い薬には程遠い愛
2017年12月18日『甘』

うつくしく研いだしろがね差し込んで二人で分けるブッシュドノエル
2017年12月16日『銀』

自転車は空の果てまで飛んでいく夢を目掛けて俺を忘れて
2017年12月14日『超自由詠』

幸せは見える場所から理不尽を追いやったまま生きられること
2017年12月12日『幸』

コンビニの中華まんさえ冷たくて電子レンジでごまかす深夜
2017年12月11日『中華まん』

休日を持て余し来たコンビニで並ぶ酒すら選べず帰る
2017年12月10日『自由詠』

やさしさの切り売りをして生きている仕入れルートはそろそろ消える
2017年12月09日『売』

愛しても手を繋いでも飲み込んで挨拶をするこっちを向いて
2017年12月07日『ください』

レモン味なんて憧れ思い出す焼肉の味煙草のにおい
2017年12月06日『私のファーストキス』

寂しさが昨日もひとつまたひとつけして消えない痕になってく
2017年12月05日『シミ』

ひとつだけ忘れないでね理不尽に害されていいものはないのよ
2017年12月03日『ルール』

優しさが罪だと知った花はもう枯れているのに手を離せない
2017年12月02日『希望』

せんせい、と仰がれていた人だった ついにひとりの親となる人
2017年12月01日『師』

右向きでさえずる鳥が僕たちを支えてくれる歌詠みの日々
2017年11月30日『右』

失恋も知らぬ二人が指切りで永遠を誓った稚き恋は
2017年11月29日『永遠』

金銀の斧も欲しいが正直を褒めてもらえるしくみがほしい
2017年11月28日『泉』

8時半パジャマで踊る娘には赤いドレスが見えるのだろう
2017年11月27日『ドレス』

遅咲きのコスモスを買うさようなら春も迎えず摘み取った恋
2017年11月26日『葬』

アナログは忘れるべしというように砂時計さえ消えたパソコン
2017年11月25日『最近見なくなったもの』

働けど働けどなお終わらない仕事は進む量も増えてく
2017年11月23日『ブレーキ』

愛情で見ないふりした一滴が積み重なって恋は砕けた
2017年11月22日『壊』

「行きにさあ、」さ行のsを噛み潰し社内旅行の雑談にする
2017年11月19日『さ行』

年末は誰かの身から出た錆を酒の肴にする人がおり
2017年11月18日『錆』

杖を突き転ばぬ先のと言いながら他人の足を引っ掛ける人
2017年11月17日『杖』

初恋の残り香に酔う故郷から結婚しますの知らせ一葉
2017年11月16日『葉』

年5回名前の横に付けられる赤字の数だけ愛をもらえる
2017年11月12日『紙』

器ごとひっくり返せば溢れてく愛を戻せやしないと笑う
2017年11月11日『下弦の月

大寝坊した夢を見た目が覚めて時計を見れば朝の四時半
2017年11月09日『慌』

わからないことをわからぬままにしてまあ頑張ると言える強さは
2017年11月08日『性』

うつくしい言葉ばかりを並べても模様ばかりで絵にはならない
2017年11月07日『無茶題が出てこなくて一首』

水滴の跡が残ったグラスとか濡れたまんまの脱衣所だとか
2017年11月06日『微』

冬を越し一緒の春は来ないこともうお互いに気がついている
2017年11月05日『小春日和』

退屈な運動会の感想を誤魔化したのが僕のはじまり
2017年11月04日『小説』

思うまま自由に書けという教師答えが決まりきった自由を
2017年11月03日『作文』

辛の字にプラス一本する棒の出所だけはみんな言わない
2017年11月02日『プラス』

幾歩かを踏み出すたびに振り返るこの子もいつか嫁に行くのか
2017年11月01日『いちいち』

生贄へ自業自得を建前に貼るレッテルは「何してもいい」
2017年10月31日『お化け』

何もかも落とせるように泡立てる見栄もほこりも嘘も涙も
2017年10月30日『シャンプー』

顔を見る勇気がなくて歓声を聞くだけ 幹に預けた背中
2017年10月28日『幹』

人の目に止まらぬように黒スーツ喪服のひそひそ声は知ってる
2017年10月27日『喪』

どうすればいいのだなんて泣きそうな声で訊くのね信じないのに
2017年10月26日『問』

現実に背を向けてるとわかっててただ「そうだね」がほしい日もある
2017年10月25日『肯定』

ミルフィユのように重ねた信頼をただひと言のフォークで崩す
2017年10月24日『層』

破局へと続く台本引き裂いたこのシナリオは私が決める
2017年10月23日『クライマックス』